地方分権改革の進め方について
平成18年4月12日 地 方 六 団 体
平成5年6月に、地方分権の推進に関する衆参両院決議がなされて以来10数年にわたり中央集権型行政システムから地方分権型行政システムに変革する取組が行われてきたが、未だ真の分権型社会を構築するには至っていない。 真の地方分権を確立し地方自治を実質的に保障するためには、国と地方の役割分担を明確にし、国から地方へ大幅な権限と財源を移譲することにより、地方自治体の権限・財政面での自主性、自立性の確保が不可欠である。 平成18年度までの三位一体の改革では、3兆円という本格的な税源移譲が行われたことは、地方分権を進める上で大きな前進ではあるが、単なる国庫補助負担率の引下げや、国の関与の見直しが全く行われないなど、地方の自由度が高まったとは言えず、分権改革は未完である。 また、平成18年度までの改革の期間中、地方交付税は大幅に削減され、地方自治体は極めて厳しい財政運営を余儀なくされている。 政府・与党合意にも明記されているとおり、地方分権に向けた改革に終わりはない。地方自治体が住民に対して責任を持って自立した行財政運営ができる地方分権型社会の構築に向け、平成19年度以降も更なる改革を強力に推進していく必要がある。 よって、今後、地方分権改革推進のために、以下の内容の実現を目指すべきである。
記
1 地方税の充実強化 現在、国と地方の最終支出の比率と租税収入の比率において大きな乖離が生じてい る。地方が真に自主的、自立的な行財政運営を行うためには、国から地方への税源移 譲等により地方税の充実を図り、この乖離を縮小することが重要である。 とりわけ、今後増大する福祉・教育など地方の担うサービスに対応していくために、 景気変動による伸張性が小さく、かつ、地域偏在性の少ない税目の移譲など一層の充 実強化を図るべきである。
2 地方交付税 「国・地方を通じたプライマリーバランスを改善するため、地方交付税を削減すべ き」、「地方交付税の財源保障機能の廃止、財源調整機能の縮小」等の意見がある が、そもそも、地方交付税は、地域社会の存立基盤を維持し、国が定めた一定水準の 行政サービスを国民が全国どこで生活しても享受できるようにするため資源の再配分 を地方自治体の共有財源で行うものである。国・地方を通じたプライマリーバランス を改善するには、まず地方自治体に対する国の関与や義務付けの見直しから行うべき であり、地方交付税制度の本質論を無視した地方交付税の削減論は行うべきでない。 したがって、これら地方交付税の本来の性格を制度上明確化すべきである。
3 国庫補助負担金の見直し 平成18年度までの国庫補助負担金改革は、国の負担率の引下げに よるものが含ま れているなど、引き続き国に権限と財源を温存し、地方の自由度の拡大という観点か らは不十分である。 今後、地方分権の理念に沿って、国と地方の役割分担を再整理し、明確化した上 で、それに対応して、財政面における自由度を高めるために、真に国が義務的に負担 すべき分野を除き、原則として廃止、一般財源化すべきである。 なお、国庫補助負担金の改革は、これまで地方の改革案で提案した中で、残されて いるものから優先して改革すべきである。
4 国直轄事業負担金の廃止 地方の改革案で示した国直轄事業負担金の廃止については、政府・ 与党合意におい て何ら触れられていない。この負担金は、国直轄事業が全国的視野の下に国家的政策 として実施されながら、地方自治体に対して個別に財政負担を課するものであり、極 めて不合理であるため、早急にこれを廃止すべきである。
5 国の関与・規制の見直し 「基本方針2005」においても、国の地方自治体が実施する事業への細部にわた る規制や関与などを大胆に撤廃する方針が示されている。 これまでの「国の関与・規制の見直し」に対する国の取組は、全く手つかずの状況 である。例えば、公立保育所の運営費は一般財源化されたにも関わらず規模や設置場 所等国の規制が残り、地域の実情に合わせた事業が実施できない。また、中山間地域 総合整備事業により整備した活性化施設では、国の手引き書により直売施設が認めら れていないため、地域住民にとっては、地元農産物、特産物等の販路拡大等による地 域農業の活性化に資することができないなど、地方自治体の判断と責任による行財政 運営を阻害している。 地方自治体の行財政運営に対する自己決定、自己責任の原則を確立するため、国の 関与・規制の見直しを積極的に進める必要がある。
6 国・地方を通じた行財政改革の推進 (1)地方の行財政改革 地方自治体は、これまで市町村合併による行政組織の再編統合や、国に先んじて 行財政改革を実行し、国を上回る大幅な定員削減や給与カットなど、懸命に行財政 改革に取り組んでいる。また、地方歳出総額も国を上回るペースでこの10年間に おいて大幅に削減してきており、これらの成果が地方のプライマリーバランスの改 善に結びついているものである。 今後も、給与の適正化等歳出の見直しなど自主改革を推進し、一層の効率的な行 財政運営に努めることで、住民サービスの向上とともに財政再建に取り組んでい く。
(2)国の行財政改革 行財政改革については、国・地方を通じた改革が必要であるにもかかわらず、国 の改革は依然として進んでいない。「国から地方へ」の構造改革を進め、地方に権 限と財源を移す「地方分権改革」を推進することこそが、人員削減など国・地方 を通じた最大の行財政改革となる。 今後は、国と地方の役割分担を明確にし、国の過剰な関与の撤廃、国庫補助負担 金の削減、地方支分部局の再編・統合により、国と地方の二重行政を排除すること など、遅れている国の行財政改革を徹底、推進することが、国のプライマリーバラ ンスの改善に資するものである。
7 地方分権推進体制の整備 真の地方分権改革を推進するためには、「国と地方の協議の場」の定期的開催や制 度化をはじめ、実質的に地方意見が反映される法的なシステムが必要である。
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