廃止日に既に議員を退職している者の退職給付
地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律(平成23年法律第56号。以下、「廃止法」という。)の施行により、地方議会議員の年金制度は廃止されましたが、廃止法の施行日である平成23年6月1日(以下、「廃止日」という。)に既に議員を退職して退職年金の受給事由が生じている者については、引き続き旧退職年金が支給されます。
同様に、廃止日に既に議員を退職して退職一時金の受給事由が生じている者については、旧退職一時金が支給されます。(既に受給した者を除く。)
ただし、平成23年1月1日から同年5月31日までに退職した者で、退職年金の受給資格を満たしている場合には、旧退職年金の受給に代えて代替退職一時金の受給を選択することができます。
また、平成23年1月1日から同年5月31日までに退職した者で、在職期間が3年に満たない者に対しては特例退職一時金が支給されます。
1 旧退職年金
旧退職年金は、廃止日に既に町村議会議員を退職している者で、在職期間が12年以上ある者に支給されます。
なお、廃止日において既に旧退職年金を受給されている者については、制度廃止後も従前どおり年金の支給が継続されます。
(1) 受給資格
平成23年5月31日までに既に議員を退職しており、在職期間が通算して12年以上あること。
(2) 請求時期
実際に議員を退職した日の翌日以降。
(3) 旧退職年金の額
- 基本年金額
旧退職年金の基本年金額は、平均標準報酬年額と給付率(在職期間に応じた加算率を含む。)により、次のとおり算定されます。
ア. 平成19年4月1日以降に退職した者
平均標準報酬年額 × { 36/150 + 0.72/150 × (在職期間-12年)}※ 在職期間が30年を超える場合は30年として計算
イ. 平成15年4月1日から平成19年3月31日までに退職した者
平均標準報酬年額 × { 40.5/150 + 0.81/150 × (在職期間-12年)}※ 在職期間が50年を超える場合は50年として計算
ウ. 平成15年3月31日以前に退職した者
標準報酬年額 × { 45/150 + 0.9/150 × (在職期間-12年)}※ 在職期間が50年を超える場合は50年として計算
- 市町村合併に伴う退職年金に関する特例
廃止日の前日までに合併をした市町村議会の議員であって、市町村合併の前日において合併関係市町村議会の議員であった者のうち、仮に合併がなく、当該任期を満了すれば在職12年以上の旧退職年金の受給資格を満たす者については、在職期間が12年以上であるものとみなし、旧退職年金の受給資格が認められます。
この場合の基本年金額は、在職期間に応じた給付率により、次のとおり算定されます。
ア. 平成19年4月1日以降に退職した者
平均標準報酬年額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)在職期間 給付率 在職11年以上12年未満 33/150 在職10年以上11年未満 30/150 在職9年以上10年未満 27/150 在職8年以上9年未満 24/150
イ. 平成15年4月1日から平成19年3月31日までに退職した者
平均標準報酬年額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)在職期間 給付率 在職11年以上12年未満 37/150 在職10年以上11年未満 33/150 在職9年以上10年未満 30/150 在職8年以上9年未満 27/150
ウ. 平成15年3月31日以前に退職した者
標準報酬年額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)在職期間 給付率 在職11年以上12年未満 41/150 在職10年以上11年未満 37/150 在職9年以上10年未満 33/150 在職8年以上9年未満 30/150
(4) 旧退職年金(基本年金額)からの控除
過去に一時金を受けたことがある場合及び在職期間中に他の公的年金制度に加入していた場合には、基本年金額からそれぞれ次の算式により得られた金額を控除し、控除後の金額が支給される退職年金の額となります。
- 一時金控除
過去に退職一時金を受けたことがある者が再就職し、後に退職したときに在職期間が通算して12年以上となり、旧退職年金を受けるときは、旧退職年金額から以前に受給した退職一時金の基礎となった在職期間(1年未満の端数期間は切り捨て)1年につき平均標準報酬年額に控除率を乗じて得た額を控除します。
ア. 平成19年4月1日以降に退職した者
控除額 = 平均標準報酬年額 × 1/100 × 退職一時金の基礎となった在職期間
イ. 平成15年4月1日から平成19年3月31日までに退職した者
控除額 = 平均標準報酬年額 × 1.13/100 × 退職一時金の基礎となった在職期間
ウ. 平成15年3月31日以前に退職した者
控除額 = 平均標準報酬年額 × 1.26/100 × 退職一時金の基礎となった在職期間 - 他の公的年金との重複加入控除
昭和49年9月1日以後の議員在職中に、自己の職業に基づく他の公的年金制度(※)に加入していた場合には、議員年金制度と他の公的年金制度の重複加入期間について、旧退職年金額から在職期間に占める重複加入期間の割合に一定率を乗じて得た金額を控除します。
※ 他の公的年金制度とは、次の法律で定める年金制度のことを指します。
厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法、旧船員保険法
ア. 平成15年4月から平成23年5月までの重複加入控除
控除額 = 基本年金額 × 重複期間 / 在職期間 × 40/100
イ. 平成15年3月以前の重複加入控除
控除額 = 基本年金額 × 重複期間 / 在職期間 × 25/100
(5) 旧退職年金額の減額
旧退職年金の年額が200万円を超える者については、200万円を超える額の10/100相当額が引き下げられます。
なお、旧退職年金の減額が行われた退職年金受給者が死亡し、遺族年金に切り替わる場合の旧遺族年金の額は、給付引き下げ後の退職年金額の1/2となります。
(6) 従前額保障による年金の額
平成19年3月31日以前に旧退職年金の決定を受けたことがある者が、平成19年4月1日以降に退職し旧退職年金を受給する場合、その金額が、従前に決定を受けた旧退職年金の算定基礎となった平均標準報酬年額及び在職期間をもとに次の算式により得られた金額よりも少ないときは、次の算式により得られた金額を旧退職年金の額とします。
ア. 平成15年4月から平成19年3月までに退職し年金の決定を受けた者
※ 在職期間が50年を超える場合は50年で計算
※ 平均標準報酬年額、在職期間とも従前に決定を受けた旧退職年金の基礎となった期間
イ. 平成15年3月以前に退職し年金の決定を受けた者
※ 在職期間が50年を超える場合は50年で計算
※ 標準報酬年額、在職期間とも従前に決定を受けた旧退職年金の基礎となった期間
(7) 旧退職年金の支給停止
- 高額所得による支給停止
退職年金額と前年の退職年金等を除く所得金額の合計が700万円を超える者については、700万円を超える額の1/2相当額が支給停止されます。(支給停止額が年金額を超えた場合は、全額支給停止となります。)
なお、支給停止期間は当年9月支給期(平成23年は12月支給期)から翌年6月支給期までの1年間です。
当該支給停止措置を行うにあたっては、前年12月までに退職した全ての退職年金受給者を対象に所得調査を実施します。(退職年金受給者に係る所得調査についてはこちら)支給停止額 =
{(退職年金額 + 前年の退職年金等を除く所得金額※) -700万円 } × 1/2※ 前年の退職年金等 前年の退職年金及び議員報酬
※ 所得金額は、住民税の課税総所得金額となります。 - 年齢による支給停止(若年停止)
旧退職年金は、原則65歳に達する月まで支給停止されます。
ただし、支給開始年齢については経過措置が設けられており、初めて議員に就職した日及び生年月日の区分により、下表のとおりとなっています。初めて議員に就職した日 生年月日 支給開始年齢 昭和61年3月31日以前 ― 55歳 昭和61年4月1日~平成7年3月31日 ― 60歳 平成7年4月1日以後 昭和20年4月1日以前 62歳 昭和20年4月2日~
昭和22年4月1日63歳 昭和22年4月2日~
昭和24年4月1日64歳 - 再就職による支給停止(在職停止)
旧退職年金は、議員に再就職した月の翌月から再び議員を退職する月まで支給停止されます。
なお、再び議員を退職したときは、年金額が改定されます。
(8) 旧退職年金を受ける権利の消滅
旧退職年金を受ける者が死亡したときに受給権消滅となります。
2 旧退職一時金
旧退職一時金は、廃止日の前日までに既に町村議会議員を退職している者で、在職期間が3年以上12年未満である者に支給されます。
(1) 受給資格
平成23年5月31日までに既に議員を退職しており、在職期間が通算して3年以上12年未満であること。
(2) 請求時期
実際に議員を退職した日の翌日以降。
(3) 旧退職一時金の額
旧退職一時金の額は、在職期間に納付した掛金総額及び在職期間に応じた給付率に基づき、次のように算定します。
- 平成23年1月1日から平成23年5月31日までに退職した者
( 平成22年12月以前に納付した
掛金+特別掛金総額の80/100+ 平成23年1月以後に納付した
掛金+特別掛金総額の100/100) - 平成19年4月1日以降に就職し、平成22年12月31日までの間に退職した者
在職期間に納付した掛金総額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)
在職期間 給付率 在職3年以上4年以下 49/100 - 平成19年3月31日以前の在職期間を有し、平成19年4月1日から平成22年12月31日までの間に退職した者
在職期間に納付した掛金総額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)
在職期間 給付率 在職3年以上4年以下 50/100 在職4年を超え8年以下 57/100 在職8年を超え12年未満 64/100 - 平成15年4月1日から平成19年3月31日までの間に退職した者
在職期間に納付した掛金総額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)
在職期間 給付率 在職3年以上4年以下 63/100 在職4年を超え8年以下 72/100 在職8年を超え12年未満 81/100 - 平成15年3月31日までに退職した者
在職期間に納付した掛金総額 × 給付率(在職期間に応じて下表のとおり)
在職期間 給付率 在職3年以上4年以下 70/100 在職4年を超え8年以下 80/100 在職8年を超え12年未満 90/100
(4) 旧退職一時金の基礎となる在職期間の取扱い
- 過去に受給した退職一時金の基礎となった在職期間は、旧退職一時金の基礎となる在職期間に含めません。
- 過去に退職一時金の基礎とならなかった3年未満の在職期間は、旧退職一時金の基礎となる在職期間に含めます。
3 代替退職一時金
代替退職一時金は、平成23年1月1日から平成23年5月31日までの間に町村議会議員を退職した者が退職年金の受給資格を満たしている場合において、旧退職年金の受給に代えて、退職一時金の受給を選択したときに支給されます。
(1) 受給資格
平成23年1月1日から平成23年5月31日までの間に既に議員を退職しており、在職期間が通算して12年以上あること。
(2) 請求時期
平成23年6月1日以降。
但し、平成23年6月1日から起算して7年を経過したときは、代替退職一時金を受ける権利は消滅します。
(3) 代替退職一時金の選択
旧退職年金を受ける権利を有する者が、共済会に代替退職一時金の決定請求を行ったことにより、代替退職一時金の給付を選択したものとみなされます。
したがって、代替退職一時金の給付を請求した時点で、旧退職年金を受ける権利は消滅します。
(4) 代替退職一時金の額
代替退職一時金の額は、在職期間に納付した掛金及び特別掛金総額に基づき、次のように算定します。
( | 平成22年12月以前に納付した 掛金+特別掛金総額の80/100 |
+ | 平成23年1月以後に納付した 掛金+特別掛金総額の100/100 |
) |
(5) 代替退職一時金の基礎となる在職期間の取扱い
- 過去に受給した退職一時金の基礎となった在職期間は、代替退職一時金の基礎となる在職期間に含めません。
- 過去に退職一時金の基礎とならなかった3年未満の在職期間は、代替退職一時金の基礎となる在職期間に含めます。
- 既に受給した旧退職年金の基礎となった在職期間は、代替退職一時金の基礎となる在職期間に含めますが、代替退職一時金の額から既に受給した旧退職年金相当額を控除します。
4 特例退職一時金
平成23年1月1日から平成23年5月31日までの間に、在職3年未満で町村議会議員を退職した者に対しては、特例退職一時金が廃止日以降に支給されます。
(1) 受給資格
平成23年1月1日から平成23年5月31日までの間に既に議員を退職しており、在職期間が通算して3年未満であること。
(2) 請求時期
平成23年6月1日以降。
(3) 特例退職一時金の額
特例退職一時金の額は、在職期間に納付した掛金及び特別掛金総額に基づき、次のように算定します。
( | 平成22年12月以前に納付した 掛金+特別掛金総額の80/100 |
+ | 平成23年1月以後に納付した 掛金+特別掛金総額の100/100 |
) |
(4) 特例退職一時金の基礎となる在職期間の取扱い
- 過去に受給した退職一時金の基礎となった在職期間は、特例退職一時金の基礎となる在職期間に含めません。
- 過去に退職一時金の基礎とならなかった3年未満の在職期間は、特例退職一時金の基礎となる在職期間に含めます。